最も不便で最も強い、文章という表現方法

ライターや文章講座の講師をやっていながら言うのもおかしな話ですが、「文章で伝える」ことは、あらゆる表現方法の中で、とても面倒くさいことだと私は思っています。
基本的に時間がかかる。正しく伝わらないこともある。場合によっては本意が伝わらず、何気ない一言の言葉尻を捕らえられて炎上することもあります。

でも、なぜ人は文章での表現をやめないのか。

それは、あらゆる表現の中で「最も心に残る」方法だからだと、個人的には考えています。
「写真」や「動画」といった他の表現方法との違いも見ながら、なぜ文章表現が「心に残る」のかをご紹介しましょう。

1.情報伝達としては最も不便な「文章」

ニュースやトレンドといった速報性が求められる情報を、正確かつ素早く伝えるには、文章は不向きです。最近のネット記事に多い「○○の番組で、あの人がこんなことを言っていた!」のような、テレビのまとめがまさにそう。

番組内で本人がギャグのつもりで言っていたことも、記事では「AさんがBさんに激怒!」のような刺激的なタイトルに変わり、ニュアンスの異なる発信をしているのを見たことはありませんか?
でも、これが数十秒の「動画」の切り抜きならどうでしょう。本人の表情や周りのリアクションも分かり、ギャグにしていることが見えてくるはずです。

または、感動した特定の1つのシーンを伝えたいとき。
それには文章よりも「写真」の方が、見えたこと・感じたことを的確に分かりやすく伝えられるはずです。

つまり、「出来事を正しく伝えるのに優秀なのは動画」で、「1つの場面を切り取るのに優秀なのは写真」なのです。
対する文章は、「情報伝達」にも「1つの場面を伝える」にも、ていねいに書かないと誤解が生まれやすい厄介な手段。
ある程度の機材が必要な写真や動画と違って、誰でも手軽に使えるものですが、正しく扱うには相応のスキルが必要なことが分かります。

2.「文章」の強さは、心に深く刺さること

ただ、こんなにも不便な表現方法なのに、廃れていくことはありません。

その1番の理由が、「最も心に深く刺さる」表現方法だからです。
(※他の表現が「心に刺さらない」という意味ではありません)

例えば、学生時代にもらった先生からの通信簿の一言。小説の中で出合ったオシャレな表現。落ち込んでいる時に知った偉人や有名人の言葉。
そんな文章が、時々あなたの中で突然蘇ることはありませんか。

私が文章を書く時でも、いまだに生徒時代にもらった言葉を思い出すときがあります。
「熱量が高すぎると伝わらない」「当たり前のことを書いても誰も読まない」のような書く心得だけでなく、「あなたの記事を読んで興味が湧いた」という嬉しいことまで。

どんな文章でも、一度心に刺さると、それは一生忘れることはありません。
時にはある人の人生をポジティブだけでなく、ネガティブにも向かわせることがある強力なツールです。
プロとしてはそのことを肝に銘じながら、文章表現と向き合わないといけないなと感じます。

3.表現としての柔軟性も高い「文章

また、先ほどから何度か「不便な表現」という言葉も使っていますが、読者のイマジネーションをかき立てるには最高の手段という一面もあります。

写真や動画だと、出てきたビジュアルそのものが「答え」になりますが、小説などの文章で書かれている内容を想像するのは読者任せ。
固定のイメージはなく、皆さんの脳内で表現の広がりを無限に楽しめることも、文章の魅力だと思います。


最後に……

ものすごくパワーのある表現方法だからこそ、大阪編集教室では「効率よく書く」や「稼げる」という作業的なポイントにはフォーカスせず、受講生の「熱量」や「体温」といった感情の部分を大切にしています。

一人ひとり違う人生を歩んでいるからこそ書ける、あなたならではの文章がある。

学ぶ中で「その人が書く意味」が生まれるよう、これからも個性を活かすことを意識した文章講座を展開していきたいと思います。

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